【改正ドローン規制】東京オリンピックに向け規制強化~個人への影響は限定的

 

 最近ドローンは、農薬散布、橋などインフラの点検など業務での活用が広がっているほか、個人での利用も急速に増え、ドローン事故も増加する傾向にあります。

 また、2020年には東京オリンピックがあり、ドローンに対する安全対策も課題となっています。

 政府はこれらに対処するため、ドローンの飛行を規制する航空法の改正を検討しています。

 この規制が、ドローン愛好家にとってどのような影響があるのでしょうか。

 

ドローンの航空法の位置付け

 ドローンは航空法第2条22項に規定されている「無人航空機」に該当します。

 同法では、無人航空機について

 航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるものをいう。

と定めています。自重100キロのドローンでも、500グラムのドローンでも扱いは同じになります。

 ただし、200グラム未満のドローンについては、政令で模型飛行機に位置付けられ、無人航空機には該当しません。

 

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200グラム未満のTELLO

無人航空機事故の状況

○死亡事故

 死亡事故は、いずれも水田に農薬散布中のヘリコプター型が起こした事故で、次の3件です。

・1996年8月、福岡県二丈町(現糸島市)で、回転翼が操縦者の顔を直撃。
・2010年7月には北海道せたな町で、機体が操縦補助の男性に衝突。
・13年7月には千葉県君津市で、機体が電線を避けようとして高度を下げすぎ、操縦していた男性の頭部に衝突。

マルチコプターのドローンでは、死亡事故は起きていません。 

○平成30年中のドローン事故

 昨年国土交通省に届けられた事故は50件発生しています。

 ほとんどが、突然制御不能になり電線や鉄塔あるいは、民家に接触し、海、山中、屋根などに墜落した事故です。

 人が怪我を負った事故は1件発生していますが、操縦者が怪我をしたもので、第三者に怪我をさせた事故は発生していません。

 過失傷害事件は1件もなかったということです。その面では安心です。

現行のドローン規制の内容

 現行のドローン規制は、飛行空域に関する規制と飛行方法の規制の2種類があります。

飛行空域規制

 現在ドローンに対する空域規制は次のとおりです。

○空港周辺での飛行の禁止

○人口集中地区での飛行の禁止

○150メートル以上の高さの飛行禁止 

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                出所:国土交通省

飛行方法の規制

○日没後の飛行の禁止

○目視外の飛行の禁止

○人又は物件との間に30m以上の距離を保った飛行

○祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空での飛行の禁止

○爆発物など危険物輸送の禁止

○無人航空機から物の投下の禁止

※ただし、地方航空局長の承認を受け認められれば飛行可能。   

航空法改正案の内容

現在判明しているドローンに関する航空法改正案は、上記規制に加え下記事項が検討されています。 

・事故が起きた場合、操縦者の報告義務化
・事故を起こした関係先への立ち入り検査
・飛行前の機体の点検
・飛行前の気象状況の確認
・操縦士が飲酒している場合や他人に迷惑を及ぼすような飛行の禁止

  などです。

 この他、 2019年ラグビー・ワールドカップ(W杯)と20年東京五輪・パラリンピックの大会期間中、会場周辺でドローンの飛行を原則禁止する方向で検討されています。

 個人ドローン操縦者への影響

 事業者の運用しているドローンは、100キロを超す重さのものがあり1キログラム以下の個人用ドローンと比べ危険度が格段に違います。発生した死亡事故をみても、業務上の事故ばかりです。

 改正案も立ち入り検査など事業者を対象とした規制が多く盛り込まれていて、事業者には影響があると思いますが、個人操縦者への影響は限定的でしょう。