殉職は最大の不祥事(長野警察官等殺害事件)〜拳銃不所持の出動は上司に問題も

長野県中野市の立てこもり事件で亡くなられた、二人の警察官と二人のご婦人に謹んでお悔やみを申し上げます。

 

今回の長野県の事件では、殺害された警察官2人は拳銃を装備しないまま現場に向かったことが報道されています。

 

警察では、受傷事故を防止することを主眼に「殉職は最大の不祥事」をモットーとしており、110番通報の内容にもよりますが、拳銃を所持せず出動を命じた上司の責任も大きいと思われます。

 

どこに問題があるのでしょうか。

 

1 警察官が拳銃を所持できる根拠

  警察官が拳銃を所持できる根拠は、警察法第67条です。

警察官は、その職務の遂行のため小型武器を所持することができる  

 

と定められています。この小型武器に拳銃が含まれるのは勿論ですが、自動小銃も小型武器に含まれます。

 

2 制服警察官は拳銃携帯が原則

  制服警察官は、警察官等拳銃使用及び取扱規範第11条で

警察官は、制服(活動服を含む)を着用して勤務するときは、拳銃を携帯するものとする。

 

と拳銃携帯が原則であることが規程されています、

 

3 拳銃携帯の例外

 拳銃を携帯する必要のない場合も、警察官等拳銃使用及び取扱規範第11条の但し書きに具体的に規程されており、

○ 室内で勤務するとき(交番その他の派出所、駐在所その他これらに類する施設で公衆の見やすい場所において勤務するときを除く。)○ 会議又は事務打合せに出席するとき ○儀式に出席するとき ○ 音楽隊員が演奏に従事するとき ○ 看守勤務の警察官が留置施設において勤務するとき ○ 交通整理、交通取締り、交通事故の処理又は交通事故に係る犯罪の捜査に従事するとき ○ 災害応急対策のための活動に従事するとき ○拳銃を携帯することが不適当であると所轄庁の長が認めたとき

 

に限られます。

同規範は国家公安委員会規則ですので、違反すれば処分の対象になります。

 

4 今回事件に当てはめると

 以上のような根拠規定をもとに、今回事件を見てみると、仮に110番通報内容に、犯人が刃物を所持していることが含まれず、危険性が予測できなかったとしても、拳銃を所持せずに現場出動したことは、警察官等拳銃使用及び取扱規範の例外規定に該当せずに同規範に違反したことになります。

 

また出動を命じた上司は、警察官の安全確保を優先に考える必要があり、可能な限り情報を収集し、適切な装備や現場急行の際の注意事項、現場での対応方法について具体的に指示する責任があります。

 

詳細な状況が判明していない現段階で軽率なことは言えませんが、なんらかの問題があったことは事実のようです。

 

殉職された2人の警察官の死が少しでも報われますように、当時の状況を詳しく検証することが求められます。