労働基準監督署から会社に「労働条件の調査について」と題する文書がきました

 従業員20数人の小企業の社長をしています。社長といっても銀行への入金、ハローワークへの雇用保険の届出、トラブル処理など色んな仕事をしており、庶務兼社長というところです。

 

 昨年末、年金事務所から「健康保険と厚生年金保険の調査」を行うと呼び出しを受け調査を無事乗り切ったところですが、今度は労働基準監督署から「労働条件の調査について」という文書が届きました。

 

blog.supintendent.work

 

  庶務担当職員に聞くと、これまでこのような調査を受けたことがないということです。

 

 文書内容を見ると

ご多様の折とは存じますが、貴事業所の賃金、労働時間などの労働条件の調査を下記により実施させていただきたく、代表者又はその代理の方にご来署いただきますよう御案内申し上げます

とやさしい言葉で書かれています。 

 

 この言葉どおりやさしい調査なのか不安になりましたので「労働条件の調査」について調べてみました。

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調査の根拠

 労働基準監督署の調査は、労働基準法と労働安全衛生法に根拠があります。

 

◎労働基準法による調査

 第101条には、調査を行う労働基準監督官の権限が定められており、調査を拒否すれば罰則もあります。

第101条
 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。

  

第120条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
 ~1項から3項省略~
4 第101条(第100条第3項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者

 

◎労働安全衛生法による調査

 労働安全衛生法にも調査を拒否した場合の罰則が規定されています。

第91条 
1  労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは作業環境測定を行い、又は検査に必要な限度において無償で製品、原材料若しくは器具を収去することができる。
    ~2項から4項省略~
 
第120条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
  ~1項から3項省略~
4 第91条第1項若しくは第2項、第94条第1項又は第96条第1項、第2項若しくは第4項の規定による立入り、検査、作業環境測定、収去若しくは検診を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

  労働基準監督官は特別司法警察職員 

 労働基準監督官は、行政上の身分のほか司法警察職員としての身分を有し労働基準法に違反する罪に限り捜査して送致する権限があります。

 即ち、逮捕、捜索差押えすることができるということです。

刑事訴訟法第190条
 森林、鉄道その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める
 
この規定を受けて労働基準法に司法警察職員としての根拠が規定されています。
労働基準法第102条
 労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。

 

このように、労働基準監督官は強い権限を持っています。 

調査内容・方法 

 労働基準監督官の調査の内容・方法については下記厚生労働省のホームページQ&Aを参照してください。 

www.mhlw.go.jp

 まとめ

 労働基準監督署から送られてきた文書を読むと任意の協力を求めるような書き方になっていますが、実際は法律に基づいた呼出状に近いものです。

 

 労働基準監督官は強い権限を持っていますので、間違っても捜査の対象にならないように、指定された文書を確実に準備し誠実に検査を受けたいと思います。

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